この30数年の中で様々な後継者という立場の人に会う機会をもった。勿論、その縁でその後、長くおつき合いをいただいて、30年も経てば先代(父親)の年齢になったり、それを越える人もいる。
また、たった一度か数度しかお会いしていない人もいる。
ユニ・チャームの創業者、故・高原慶一朗さんは、私の仕事人生においてもとても印象的な人だし、経営者のかくあるべき姿を氏の言動をもって学ぶことができたお一人である。
この創業者の後継者は大変だなあと思ったし、周囲の人もそう思っていた。なにしろカリスマ経営者だし、行動的、論理的、学びグセがあり、弁が立つという人だった。
二代目社長になったのは、息子の高原豪久氏だった。私はたった一回しかお会いしていない。一言で言えば、真面目でおとなしい方という印象であった。
しかし、周囲の心配をよそに二代目社長は堅実に、確実に一部上場会社として成長させている。特にグローバル戦略は秀逸で、二代目社長になってから、成長路線の骨格になっている。今や海外売上比率が約6割を占める。
進出国の市場の成長ステージによって直接参入、技術供与、M&Aといった三つの戦略を巧みに使い分け、中国などの大国だけでなく新興国での支持も獲得したことで、紙おむつ市場や生理用品市場ではトップクラスのシェアを獲得、今や欧米企業に劣らぬグローバル企業になった。
ユニ・チャームの二代目社長は先代創業社長(父親)のように対外的には必要以上に表に出ないし、ハデなところは無いが、先代社長の積極的な経営を継承して、ある面では先代を凌ぐ実績を創りつつある。
その要因は何か、一言でいえば、「決断」と「実行」である。少子高齢化で伸び悩む日本市場からまだまだ成長するアジアに進出し、成長市場をつかんだということである。「次はアフリカ市場」と発表している。
私は会社を発展・成長させるための社長の責務として「決める―決断」し、愚直に「実行」して「成果」を出すことであると提言している。