今月の学び(2021.11 №48)

後継リーダーに必要な役割と仕事③-「どんな会社を創りたいのか?」の考え方のヒント、特に後継者が考えて欲しいこと 

今は亡き方であるが、松野宗純さんという方がいらっしゃった。私は1990年頃にご縁を得た。松野宗純さんは昭和3年生まれ、大先輩であるが、1990年代半ば頃になると私の主宰する和田塾に勉強したいとよく来られていた。

松野さんは慶大出身でエッソ石油に勤められ、副社長までされた。若い頃にはまだ珍しかった米国留学をされ、米国ビジネスのノウハウも身につけた。だが、副社長時代、当時の社長とソリが合わず、突如、退職され、禅宗の寺で得度され、雲水になられた。

その後は仏教と経営などの本を書かれたり、講演活動をされていた。その松野さんに教えていただいたことの中で二つのことが印象に残っている。

一つは「諸行無常」である。その意味は「世の中、常に同じことはない。常に変化している」であり、またもう一つの意味は「とらわれない心をもつこと」と教えていただいた。

まさに「変化対応」であり「イノベーション」である。

経営の世界も仏教の世界も同じような発想、考え方があるのだととても印象に残った。

もう一つ教えていただいたのは「会社は大きくするだけでは駄目だ」ということである。この言葉から私は会社には「強い会社」と「弱い会社」があり、そして「良い会社」と「悪い会社」があるのだという、会社の見分け方を自分なりに考えついた。

今回のテーマの「どんな会社をつくるのか」の視点から提言したいと思う。「強い会社」は一言で言えば「潰れない会社」であり「競争に負けない会社」である。また「圧倒的にお客様支持を受けている会社」である。そして具体的には

①トップの理念が明確であり、社員の言動にも浸透している

②社員が明るく前向きに積極的に働いている

③高収益商品を持ち、一番商品を持つ

④経費の使い方が上手

⑤財務内容が良い

⑥資産が多い

などといったことがある。長年の経営活動をきちんとやってきているので、利益もしっかり出し、納税もして、社会貢献している会社である。

利益というのは納税や配当の源泉であるが、利益がなければ資産もつくれない。利益を出していなければ将来の投資や突然の天変地異などのリスクが襲いかかった時、損益分岐点を割り込んでしまう時すらある。そんな時に備えて、自社の現金や資産は「存続費」としても大事である。だから「利益は存続費」でもある。

もう一つ「良い会社」を一言で言えば、利益関係者にとって「必要な会社、なくてはならない会社」であると思う。そのためには

①お客様志向している

有名な話しであるが、アマゾン・ドット・コムのあらゆる会議では「空の席」を用意する。エンプティチェアーである。つまりどんな会議にもお客様が参加しているという設定であり、自分たちの会社はお客様のために存在しているので、全てはお客様視点で考え決めるという究極のお客様志向である。

②社員に報いる

これも良い会社の条件と思っている。社員に報いるとは、お金であり、職場環境であり、制度である。人間的に魅力的な人が働く職場はこのような条件が満たされている。

③地域に貢献している

貢献するとは雇用であり、納税がわかりやすい。一つの例であるが、北海道、帯広市に銘菓で有名な「六花亭」という会社がある。東京の百貨店から「出店を」の声がかかっても出店しない。北海道に固持している。この六花亭が中札内村というところに「六花の森」という自然林の中に工場とカフェ、そして六花亭の包装紙は有名であるが、その花の絵の作家「坂本直行」の美術館を点在させている。これがあるだけで、地元の人たちにとっては「誇り」でもある。

つまり良い会社とは「良い商品」「良いサービス」をつくり、提供し、働く人たちがやり甲斐、生き甲斐を感じ、イキイキ働いている会社である。「強い会社」「良い会社」とは、経営者が相当に覚悟をもって、志、信念を貫き、誠実な経営をする結果として出来るのだと思う。