和田の本棚(2021.12 №50)

 

和田の本棚

和田の書棚から「気になった一冊」をとりあげて紹介いたします。

著者:向井万起男

発行所:講談社

2012年4月19日第1刷発行

定価:1170円(税別)

<本紹介>

医師でありエッセイストでもある著者(「日本人初の女性飛行士、向井千秋の夫」を潔く自認、おかっぱ頭と口ひげの風貌でも知られている)が、今まで出会った女性たちとの交流を綴ったエッセイ。「私の自尊心を傷つけた人」「私の向学心を奮い立たせた人」「私の本心を聞いてくれる人」など24人の無名の女性たちが登場する。

著者は医学者 ( 医学博士 )であるが、 本業は 腫瘍 病理を専門とする病理医であり、慶應義塾大学 医学部 准教授 、慶應義塾大学病院 病理診断部長を歴任した。病理学に関する論文と共に「君について行こう 女房は宇宙をめざした」「続・君について行こう 女房が宇宙を飛んだ」「渡る世間は『数字』だらけ」など著書多数。

<気になった言葉>

〇私の女房は留守にすることが多いなんてもんじゃない。ほとんどいない。いたりしたら、それはもう奇跡に近い。それでも私には離婚する気なんて起こらない(97P7L~)

〇「男は幼いころから、自分にとって本当に大事なことは女性に対してのほうが話しやすいことを知っている」(188P後ろから3L~)

〇世の中で一番恐ろしいのは、若者に真っ向から勝負を挑まれることなのだ…これに比べたら、年上の人や地位の高い人に叱られたりすることなんて屁みたいなもんだ(72P1L~)

◎女性の友人は男性の友人とどこがどう違うのか?それは自分でもよくわからない。でも、一つだけハッキリわかっていることがある。女性の友人が私に与えた影響の大きさだ。今の私は女性の友人抜きにはありえない(195P後ろから6L~)

※…は中途略を表わします

[感想]

「私の関心を引き続ける人」に登場するYさんは、向井さんを〝あにき〟と呼び、13 年間にわたってメールのやりとりを頻繁していながらも、電話で話したことが5回ほどあるだけで一度も会ったことはないし、顔も知らないのだという。こんな人いるんだなあ~とビックリし、向井さんの魅惑的な人間関係の豊富さに、「年齢差を越えた生涯の友」というくだりに羨望!

病理学の医学博士なんて、それで妻を宇宙飛行士に持つなんて、失礼ながら「どんな変人?」と思っていたのだけど、この本の向井さんはとってもチャーミング。ちょっと厚かましかったり、不躾なくらいな質問をなげかけたりしても、それをひょいと受けたり、かわしたりの、ここに登場してくる女性たちもまたチャーミング。

そのチャーミングさを堪能しつつ、「私はまるっきり格調高くない男だし、伝統を破ることが好きな男だ」という万起夫さんのエッセイ、ただただおもしろくて、肩の力がぬけて、好奇心がそそられ続ける一冊です。茶目っ気たっぷりだったり、でも「人」に対する好奇心がつきなかったり、あと、際どい質問をして相手に難なく答えさせてしまうところとか…和田に似てますね。こんな人に「私の〇〇に●●●した人」と言われてみたい!

[和田のコメント]

秘書の米倉の机の上にこの本が置いてあった。タイトルに惹かれた。この本棚で紹介しているものとは全く違うジャンルである。

医者であり、あの宇宙飛行士の向井千秋さんのご主人ということも興味があった。彼は「女性の友人」ということにこだわっていると思った。ここに出てくる24人の女性はある面においては向井さんの生き方、考え方、仕事に少なからず影響を与えてくれた人たちである。

つまり、彼の人生をハラハラ、ドキドキ、ワクワクさせた女性たちである。その女性たちに会ったことによって、向井さんの人生が豊かになり、彼を成長させたことも間違いない。

「女性好き?」の私も少し似ているところがある。私も小学校の先生から始まり、多くの女性たちに出会い、育てられたと思っている。

この本の面白さは24人の女性との関係を24のタイトルに分けて書いているところだ。人間関係(男女に関係なく)においてとても大事なタイトルが24章ある。時には成長させ、時には奮いたたせ、時には人間の本質的なものを動かし、時には原点回帰させたりするタイトルが並ぶ。

だから女性だけでなく、あらゆる人にとって「自分に人生に影響を与えた人」という視点で考えれば男性でも良いし、女性でも良いと思った。

向井さんは優しい人、フェミニストだと思う。「下心(したごころ)があってもそれを抑えられる人」だ。僕には難しいな!!

しかし、時にはこういう本も「心の栄養剤」になる。