ワダからのメッセージ (2021/12/24 №89)

2021年、大きな課題を抱える日本と世界を考える!!

2021年12月15日、福岡にいて、このメッセージを書いている。「今年ももう12月か?あっという間だったなぁ~!」という時間感覚に浸っていた。

この浸るという感覚には二つある。一つは単純にこの一年の時間経過の早さに驚く浸り方である。

例年であれば、海外に4~5回は行っていたであろうに2020年から全く身動きがとれなくなってしまった。海外に出ることによって私は時間のメリハリが出来た。と同時に動くことが好き、旅が好き、知らないところに行くのが好き、新しい体験をすることによって自分の好奇心が満たされるのが好き、そんな「好きずきの自分の心が満たされること」に生きている実感を得る。

もう一つは自分の年齢からくる時間に対する考え方というか、とらえ方である。長寿の代表選手だった日野原先生は「時間は命だ!」という言葉を残されている。この言葉もあって自分なりに「生きている時間に敏感になっている」のである。

この事を感じ始めてから「引き算人生」になった。100歳まで生きてもあと25年、90歳まで生きても15年、男の平均寿命でいえば、もう10年も無い。自分の両親は90歳半ばまで生きた。しかし、元気でいたのは80歳半ば過ぎまでであった。

そんな人生の自分時間を感じているが、決してマイナス思考ではない。日野原先生は「いかに有効的に命の時間を生きるか」ということで、この言葉を遺されている。

そんな事を考えながら、この一年を振り返っている。

もう2年近く新型コロナウィルスに襲われて、やれデルタ株だ!オミクロン株だ!と新種のウィルスが次々と現れ、終息は来ないのだろうとさえ思う。しかし、現代の医学の凄いのは、この新型ウィルスが発生するやいなやワクチン開発(本来なら治験の数を増やし、安全性が確認されてから世に出すのが常識である)をし、対応できるのであるから驚く。それだけ米国などでは日頃からあらゆるウィルスに対する仮説を立てて研究しているのだろうということも分かる。

しかし世は、SNS時代である。世界でワクチンに関する様々な陰謀説が大量にとびかっている。SNSの便利さと恐ろしさであるが、今回のような得体の分からないウィルスが突然発生すると、人間は様々な想像力を発揮するものだと実感した。それが右か左か?のグループに分断させてしまっている。

第一次大戦や第二次大戦の時もそうであったが、SNSのような一人ひとりがスマホなどを持たない時代でも群衆心理の操作は可能だったようである。

人間は不安になった時に片寄った思考をするものだ。そして〝味方〟と〝敵〟をはっきりさせたがるものだと思う。今、世界中で地政学的にも「分断」があちこちで発生している。ヨーロッパ内でも、そしてEUとロシア、ベラルーシでも、イランやアフガンと米国を中心とする西側諸国と、米国と中国、そして台湾、日本も中国や韓国とはお互いに疑心暗鬼になっている。

これらの国家間の関係性は、来年以降も続くのだろう。特に全体的な国力の低下、国民の結束力の低下が著しい米国と一党独裁の共産党の中国との覇権争いは今後、さらに激化が予想される。

特に米国と中国との関係は、日本にとって大きな問題となる。外交的には日本と中国とは決して良好な関係にはない。しかし、力をつけた中国経済は生産国として、また市場(マーケット)としても日本企業にとっては欠かすことのできない存在である。

大手企業の経営者に聞いても「本当に難しい判断をいつも突きつけられるのが中国との関係だ!」と言う。

「グローバル社会」「情報社会」になって、江戸時代のような「鎖国」でも国が成り立っていた時代とは違い、経済や政治、そして軍事、またサプライチェーン化した状況を考えても日本だけで生きていけないどころか、ある面においては依存せざるを得ないほどである。

その代表例が「食糧」だ。自給率40%を切る日本は私たちの食べる食物のほとんどを外国に依存している。牛肉、鶏肉、豚肉などの肉類、穀類、パスタやうどんなどの原材料もである。魚介類でも大半が輸入だ。だが、最も危険なのは「食糧危機意識のない日本人」である。

外食もスーパーで買う食品も当たり前に手に入ると思っている。「平和というのは、危機というものは、それを身近に感じたり、考えたりしないこと」である。

実は、もっと恐ろしいのが最近、世界の科学者などが警鐘を鳴らしている「水危機」である。「ディ・ゼロ」を検索してもらえば分かるが、この地球から水が無くなることを意味する言葉である。

すでに北米大陸、南米、オーストラリア、アフリカなどの巨大な大陸、そしてインドから中国にかけての大陸で「水不足」が始まっていると言う。北米大陸、特に中西部は「穀倉地帯」であり「畜産地帯」である。大豆やトウモロコシ、小麦を収穫し、世界に供給している。肉牛飼育もそう、米国では今や大産業だ。これらのために大量の地下水をこの60年間、吸い上げ続けている。

地球には「帯水層」という巨大な地下の水ガメが存在している。各大陸にある。アフリカ大陸や中国の一部では既に「枯渇してしまっている」という。米国の巨大農業はこの60年以上「無料の水」、つまりタダの水を大量に使い続けてきたのである。

ある学者は「鉱山を掘り続け、無くなれば閉山する!というのと、この地下水に依存した農業は同じ様な道を辿っている」と断言する。

どんなことが起こるのか?考えるだけで恐ろしい。

こうなると金持ちも貧乏人もほとんど変わらない。スーパーボランティアの尾畠春夫さんのように、月5万5千円の年金で、そのうち食費は2万円以内、バナナの皮も食べる、草も食べるというような生活ができる本当の「生きる力」を持つ人しか生き残れないのではないだろうか?とも思う。

米国のNASAは、地球の帯水層にどれだけの水が残っているか?を2機のロケットを飛ばして、宇宙から地球に電磁波をあてて測量している。このような調査から「水危機」を発表しているのである。

今のところまだ大量に海水を真水にできるほどの技術というか設備力はできていないから切実な問題である。

考えてみると私の子どもの頃、1950年代は水道の水もチョロチョロと出るだけ、停電なども頻繁に発生していた。子どもだったからそれが不便だったか?はよく覚えていない。それでも両親や大人たちは戦後の貧しさから豊かになることを信じ、一生懸命働いていたことを覚えている。

先日、内閣府が、「北海道から東北にかけての千島・日本海溝における巨大地震に気をつけてあらゆる準備をするよう」警告した。マグニチュード9以上が予想され、死者は約20万人、経済損失は約30兆円という大地震で「400年、発生していないからそろそろ…」ということらしい。

富士山噴火もそうだ。「大企業の一部は既にその時を想定して色々な準備に入った」との報道もされている。

また、最近、人を刺す、放火するなど、人の命をあまりにも簡単に殺める事件が続出している。子どものいじめ、虐待、不登校、家出など、子どものストリート・チルドレン化が多発しているという。子どもの居場所が無くなっているというのである。

その子どもたちのネットワークもまたSNSであり、「それが心の拠り所でもある」という。

ビジネスはコロナ不況に陥ってしまっている。特にサービス業は厳しい状況になっている。「動かない、泊まらない、食べない、飲まない、交わらない」からそこに関わる業種は特に厳しい。

昨年、2020年の4月頃から私は「〝7割経済〟ということを前提にあらゆることを準備しよう、対応しよう」と提言してきた。

これはコロナ禍二年を迎えて現実になってきているようである。

しかし、こんな状況でも変化は続いている。その中で最も顕著なのは「デジタル化」「DX化」だ。私たちの生活の中でもEコマースやキャッシュレス化が当たり前になってきている。経営の中でもデータ化やAI化が進行している。この大変化に必要なのは「IT人財」である。そのために「リスキリング」というデジタル知識の教育・戦力化のための教育が必至になってきている。

2022年もコロナは消えないだろう。しかし、変化はさらに進化していく。そして自然災害もいつ発生するか分からない。外交も分からない。そんなことを感じたから、今年を振り返り、来年に向けて私なりに準備に入っている。

さて、皆さん、2022年をどう生きるか?一つの答えは「リスクを想定して生き抜く!」ということだと思います。

「月刊web和田塾」の年内のコンテンツ配信は本日が最終、来年の配信は1月11日からとなります。

良き年になりますよう願っております。

 

※12月7日のワダセミナーにて私が作成した「これから10年先に劇的に社会環境が変わる10の社会」を参考にしてください。

※新谷学さんが編集長をされている月刊文藝春秋の2022年の新年号(文藝春秋100周年の記念号)の中の「日本の今を知る」も参考になります。特に今号はトヨタ自動車の豊田章男社長と新谷さんの対談があります。日本で最も単独インタビューが難しいと言われる豊田社長ですが、それだけに内容もおもしろいので是非、読んでみてください。