今月の学び(2022.3 №52)

どんな会社を創るかは経営者の考え方次第である

会社は業種(何を扱うか、生産するか、卸しをするか、販売するか)によって会社の規模(売上高と社員数)が変わってくる。

そして昨今の自動車やIT産業のような業種はグローバルな土俵で戦わないと生き残れない。必然的に規模を追求しなければならない。

しかし例外はある。イタリアに本社をおくフェラーリ社は高級スポーツカーで、金持ちであり、スポーツ車が好き、フェラーリが好きというエスタブリッシュマーケットでその存在感が際立っている。

売上は3,200億円ほどである。トヨタやベンツなどの売上げのシェアを獲り、生き残り、成長していかなければならない会社とは違うが、フェラーリなりに性能デザイン性においては常に改善していかなければエスタブリッシュマーケットから飽きられてしまう。いわば規模よりブランド戦略の追求に力をおく。

後継者であろうと創業者であろうと、経営者がどんな業種で生業(なりわい)を引き継いだり、創業するかは実に興味深いことであり、そこには運もある。

だが、成長だけ、つまり、売上げを中心に追求していく会社は世界的に見ても消滅していく可能性が高いのは、様々な会社がそれを教えてくれている。

例えば、高度経済成長と共に日本の消費は大きくなった。米国や日本も同様であるが、GDP(国内総生産)で米国も日本も消費が約7割を占める。だから小売業企業の売り上げは大きくなる。

米国を代表するウォルマートは約50兆円の売上げがある。1980年代から急速に成長し、特にデジタル社会到来の中でも既存小売業としてはECビジネスにも挑戦し、それなりの成果を出し、イノベーションしている。

日本で消費が大きくなった時に誕生したのが「量販店」という業態だ。ほとんどの経営者が衣料品や食品などの小売店を生業(なりわい)として大型化化、チェーン店化を図った

1960年代後半に全国展開したダイエー、関東圏を中心にしたイトーヨーカ堂、そしてさらにリージョナル(地域)に絞って出店したタイプに分類できるが、1980年代に流通業界の覇者として地方百貨店、地域零細小売店に襲いかかり「大店法」という法律(米国から押し付けられた法律)によって展開して地方の商店街をズタズタにした。けれども結局、ライフサイクル(生命曲線)は約30年で巨象は自ら消滅してしまった。

ではこの業種・業態が悪かったのか?決してそうではない。

「どんな会社を創るか」の意識に問題があったのではないだろうか。私も流通業界を中心にコンサルする会社にいたが、今になって解る。

トヨタ自動車は売上げ20兆円の世界のトップ企業であり、利益率も10%ほどを出す。良くも悪くも「トヨタ銀行」と言われるように潤沢な資金を持っている。これは、かつて倒産しそうになったトヨタ自動車がその反省として「利益を出し、どんなことがあっても倒産してはならない」という経営の考え方、意識へと変わり、部品一つとっても合理性を考え、業務そのものの改善の追求によってムダ・ムラ・ムリを排除して「ナゼ・ナゼ・ナゼ」を業務の理念の根底にして実践してきているからである。

私は利益は長年出し続けなければならないと思っている。利益を出しても手元に残るのは3分の1程度だ。会社はこの利益の積み重ねによって手元も資金が蓄積されるのである。

利益を出すことは社員を幸せにして会社を永続する元になる。一朝一夕に利益=資産は貯えられない。

当時の量販店の経営者は1970年代から1980年代にかけていわゆる「経済成長という風の中」で借金をして店舗を出店し続けた。土地を買い、店舗を造り、そしてそれを担保に借金をして過剰債務に陥った。

そしてバブル経済とその崩壊によってダイエーやマイカルなどは破綻、金融の風も消費の風も一挙に変わり「失われた20年」の中で消滅していったのである。

成長型企業の落とし穴は経営力が組織的につかないまま人財が育っていないまま売上高=規模の追求に走ることにある。

売上げが上がっている時はリスク要因にはなかなか目を向けたがらない。それも経営者の考え方であり、能力である。

〝どんな会社を創るのか〟の最大のポイントは経営者の考え方、すなわち理念を浸透させ、人財育成に力を注ぎ、社会から必要とされる商品なりサービスを創り続けることを愚直にやれるかどうかである。

会社経営は環境適応業、すなわちあらゆる変化にどう対応=イノベーションするかであり、どんなことがあっても倒産しないという会社を創るということが私は最も大事だと考える

今、IT時代、DX時代とかいわれ、デジタル対応はどんな業種にも求められる。だからやらなければならない。

そして、今回のコロナウィルス襲来は全世界で蔓延し、あらゆる業種が大打撃を受けている。

しかし、そんな中でも確実に経営をしている会社もある。それは日頃から財務基盤を強固にし、人財力育成に力を入れ、何をすべきかを決め、スピードをもって速く動く、そしてお客様の要望・満足に応えるべく商品やサービスを提供している、そんな会社である。

こういうことを確実に実践している会社は〝運も味方してくれる〟のである。

そう、会社経営は経営の考え方一つで決まるのである。