コロナ騒動に明け暮れている日々であるが「静かなる有事」とも言われている人口問題が静かに日本の国の経済を含めて私達の生活にじわじわと変化をもたらしている。人口問題について、私はもう20年くらい前から関心を持ち、「会社経営や商品の販売などに大きく影響を及ぼすだろう」と私なりに観察してきた。
人口問題で起こっていることは①都市部と地方との格差 ②結婚しない、子どもを生まない(生まれない) ③若い労働力(働き手)不足 ④高齢者に関わる問題 ⑤社会保障費の増大 ⑥独居老人の問題 等々である。
なかでも人口構成の変化が経済や生活に与えるインパクトは大きい。例えば高齢者(65歳以上)が総人口に占める割合の推移は1950年(4.9%)、1985年(10%)、2005年(20%)、2020年(28.7%)となっている。2020 年の高齢者人口は3,617万人である。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム(1971~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年、つまり今から20年後であるが、高齢者の割合は35.3%となり、3人に1人が老人で、子どもや若者がある場所、ある時間で見ることがほぼ無くなる。
私は以前から「今日、子どもを見たか?」という現象がアチコチで起こるだろうと言っている。既に50年の単位でみると、子どもがいなくて、子ども祭りができない、子どもの野球やサッカーのチームができないという現象は今や当たり前になっている。この少子化問題は国としても対策しているが、なかなか解決に向かっていない。
当然、小・中学校の統廃合は急ピッチで進んでいる。残された学校の活用も急務になっているのが現実である。
既に問題が現実化しているのは「労働力不足」である。特に1次産業(農・林・漁)では深刻で外国人に頼らざるを得ないのが現実である。既に技能労働者と称して、中国、ベトナム、フィリピンなどから約250万人ほどの人が日本に〝出稼ぎ〟に来ているのである。
だが、このコロナ禍で日本に来られなくなっている働き手も多く、一部の農業地では深刻な働き手不足になっている。日本の食糧自給率は35~40%前後で、これ自体が問題であるが、外国からの労働力を維持しないかぎり、食糧問題も深刻な状況になることを私たちは知っておく必要がある。
そして今や製造業の工場でも彼らの存在なくして稼働できなくなっている。
日本の人口が1億人くらいになり、高齢者の割合が40%くらいになる2040年頃には外国人労働者は最低1,000万人は必要になってくるだろう。各地方・地域でこういう人たちとどう共存・共生していくかを今から意識し、学んでいかなければならない。
もう一つ人口変化で深刻な問題は〝税収〟の問題である。高齢者は年金生活者であり、そして介護という経費がかかる。さらに既に自治体で問題になってきているのがインフラ経費の不足である。日本は高度経済成長期(1960~1970年代)に各地方自治体が橋や道路などを造っているが、この改修、補修が必要になってきているのに資金不足でできない自治体もある。
生活者の生命危機であり、利便性が損なわれ始めている。
そして、コロナ禍で飲食店などが「出前」「テイクアウト」を急激にトライして、それなりの成果を出し始めている会社や店もある。コンビニなどは人口の密集地で宅配強化も始めているし、お一人様用の商品開発も進んでいる。
ジワジワと進む高齢化社会で買い物がしづらい人たちが急増しているのでコロナ禍で始めたノウハウをこれからも常態化していくべきであるし、そういう流れになるだろう。ITを駆使した「宅配、デリバリー時代の到来」である。そしてこれらの仕事をしているのは〝ギグ・ワーカー〟と言われているフリーターであることを忘れてはならない。これも社会問題の一つになっている。
そして今、新たなる課題として「世代間のギャップ」がある。
特にデジタル時代に注目されているのが「ジェネレーションZ(Z世代)」と呼ばれる1990年代後半から2010年代にかけて生まれたデジタルネイティブ世代だ。日本にけるインターネットの普及率が30%を超えたのは2000年代、つまり「ジェネレーションZ」は生まれた時から目の前にインターネット、スマホがあった。そして私はこのZ世代のことをコミュニケーションの中心がSNSであることからも「SNS世代」とも言っている。
現実に先日、ベンチャー企業の創業社長に会った時、既にこの35歳の社長でも「新卒の20代前半の人たちとは全くコミュニケーションノウハウが違うのでSNSビジネスは彼らに任せた」と言っていた。
現在、10~25歳くらいまでのこのZ世代は日本では1,800万人くらいいる。日本の人口の約15%がこのZ世代である。
この世代の区分けで1960年代後半から70年代に生まれた世代をジェネレーションX、80年代から90年代前半生まれをジェネレーションYと米国では区分けしている。
日本ではY世代は〝ゆとり世代〟とも言われ、現在の〝世代ギャップ、価値観の違い〟が社会問題化している。
こうして世代は「X・Y・Z」と並んでいるが、「X・Y」と「Z」との間には大きな断絶があるのではないかと思う。これは会社の採用や育成などにも影響を及ぼし始めている。
そしてもう一つ心配なのはコロナウィルスに襲われた「2020年、2021年」の新入社員と大学の新入生世代のことである。ほとんど会社や学校に行っていない。同級生とのコミュニケーションどころか友人もできない。この世代が社会に出て5年、10年経って会社の中心世代になった時に「どんな人財になっているのだろうか?」ということである。
さて、世界は今やGAFAMに代表されるIT企業が世界の中心にあり、デジタル社会、インターネット社会をこれからも動かしていくだろう。前述したように日本も皆さんの会社でもこの「Z世代」が会社の中枢でやっていかなければならない。そうしなければ10年後に多くの会社は淘汰されてしまうだろう。
結論から言うと、2030年に向かってデジタル社会、人口減、世代間ギャップ、富と知識の格差社会が進んでいくだろう。
ビジネスも量よりは付加価値のあるビジネスをしていかなければ生き残れない。そのためにもZ世代がこれからの日本の浮沈を決める。彼らには期待していいし、各社で登用して欲しい。
そのZ世代の代表的な人財は米国の連邦取引委員会(日本の公正取引委員会)の委員長を担うリナ・カーン氏、弱冠32歳(1989年生まれ)の女性である。注目の人である。天才と言われる由縁である(実際は、カーン氏はY世代であるが、ほぼインターネット社会で育っているが、X世代の憧れの存在としてとらえられている)。