「ワダのその時、思ったこと、感じたこと」 (2021/11/10 №96)

米国と日本の「人財力」の差を示す「リナ・カーン氏(32才)の存在」

やはり米国は人財が豊富で、まさしくダイバーシティの見本のような登用をする。

日本の公正取引委員会に相当する米国連邦取引委員会(FTC)の委員長であるリナ・カーン氏は32才の女性である。パキスタン人の両親のもとにロンドンで生まれ、11才の時に米国に移住したという。2017年にイェール・ロースクール時代に書いた「Amazon’s Antitrust Paradox」(アマゾンの反トラスト・パラドックス)で注目を集める。そしてバイデン大統領就任と共に2021年6月15日にFTCの委員長に就任した。

その彼女が今、大仕事を仕掛けて注目を浴びているのである。彼女はアップルなど米IT大手5社による企業買収で当局に報告不要の小規模な案件が過去10年で616件あったとの調査結果を公表。競争を妨げないかどうか、事前に調べる制度が十分に機能していない可能性があるとして、審査を強化する姿勢を発表したのである。

買収された企業の約40%が創業5年未満であった。若い企業でも特筆すべき有望な技術やサービスを抱えていれば、大手IT企業は「将来、自社との競争になる前に買収してしまおう」という戦略であり、そこにリナ・カーン氏は「競争を妨げているのではないか」という疑念をもったのである。

例えばMeta(メタ、旧フェイスブック)の「インスタグラム」や、対話アプリ「ワッツアップ」などの買収を問題視して、事業売却を求めて提訴している。この問題は議会が反トラスト法を改革することを前提としなければ難しいとも言われている。

弱冠32才の委員長がどう采配を振るうのかも注目である。

それにしても米国の懐の深さを感じる。

日本の公正取引委員長にはキャリア、学閥、内閣府の人脈など、とても30代の女性が委員長になれる風土はない。