和田の本棚(2021.11 №49)
和田の本棚 和田の書棚から「気になった一冊」をとりあげて紹介いたします。 |
著者:松下幸之助
発行所:PHP研究所 1984年9月12日第1刷発行 定価:1170円(税別) |
<本紹介>
「人生における成功とは、自らに与えられた天分を生かしきることだ」と著者は言う。その天分をいかにして見出し、発揮させるか。90歳を迎えようとしていた故・松下幸之助が素朴に語った人生の知恵と指針が詰まった一冊。
<気になった言葉>
〇広い意味でのこわさというものを自ら求めてでも常に心を抱いて、…そうすればそこにおのずと謙虚さというか一種の慎み深さが生まれてくる…こわさを知って謙虚な態度をとりつつ前進への努力をするというところから、人間としての真の実力も養われてくるのだと思うのです(35P後ろから3L~)
〇あくまでも自分というものをしっかりつかみ、その上で、素直な心で聞く…自分をつかんでいないと、相手の言うことがみな正しく思えて、聞くたびに右往左往するといったことになりかねません…自分の都合のいい意見ばかりを求めてしまうことにもなるでしょう(48P6L~)
〇昨今の世の中を見ていますと、どうもこの人生観に弱いものがあり、親自身が迷っている。そこに青少年の好ましからざる姿が起こる一因もあるように思えてなりません(93P6L~)
〇お互いの人生は80パーセントないし90パーセントまでは天の摂理によって定まっているのではないか…しかしあとの10なり20パーセントの人事の尽くし方いかんによって、その運命にいっそうの光彩を加えることができる(109P5L~)
◎ともかくも一所懸命、希望と勇気をもって人生の歩みを続けることが、自分に恵まれたせっかくの寿命を生かしきる道であり、その道をとることが私自身の務めでもあるのではないか(110P後ろから4L~)
※…は中途略を表わします。
[感想]
自らがやってみて「ああ、こういうことなんだなあ」と心に沁みついたことを親が子に愛情をもって語りかけているかのようで、本を開くとすぐに松下幸之助さんの慈愛に満ちた笑顔の写真が飛び込んでくるのですが、その表情と相まってしみじみとその言葉の一つひとつが入ってきます。
生活をしているうちにザワザワと入ってきてしまう単なる情報に気をられて、きちんとこういう言葉を省みる時間が自分にどれだけあったのだろうか、自分自身が親からどれだけ聞いてきて、親としてどれだけ子どもに伝えていたのだろうか、考えると怖いくらいに自信がなくなります。
20代、もしくは30代で読んでも「きれいごとなんじゃないか。正論すぎる」と入ってこなかったかもしれません。でも、数々の挫折や失敗を繰り返した後に読んでみると、その失敗が「こういうことなんだな」と収まってくる、当時読んだ時にはちょっとひっかかった言葉に過ぎなかったものが十年、二十年たって甦る、それが読書の醍醐味でもあると思いますが、松下幸之助さんの言葉には特にそんな魅力が詰まっているように思います。
[和田のコメント]
この「和田の本棚」で松下さんの本を取り上げるのは今回で3回目である。
私は私自身の一つの生き方や物事を進めたりする時に「もう一人のだれかの声を聞くように」しています。
この「だれか」とは両親です。そして船井幸雄さんです。もう一人が松下幸之助さんです。
今の仕事をするようになって、船井総研時代は船井さんの看板を背負って、お客様のところに行くわけですが、大事な提案や判断をしなければならない時は「こんな時、船井さんだったらどう判断するのか?」を常に考えていました。その方が独りよがりにならないと考えていたからだと思います。
松下幸之助さんもそんな時の一人として出てきます。30代の頃から松下ファンとして多くの本を読み、今も年一回は京都にあるPHPの本社を訪ねます。「松下さんだったらどう考えるだろうか?」といつもどこかであるのです。
そして今回、この本を取り上げたのは、コロナ襲来から約2年、特にリーダーの方々へ、会社経営を今後どうしていくのか?また自分や社員の方々がどう生きていくのか、この艱難辛苦をどう乗り超えていくのか?そんな時のためにこの本をお薦めします。
やはり松下さんの考えはシンプルな言葉であるけれど、深い意味があります。それが心にグッと伝わってくるから不思議です。是非、お薦めします。
この「人生心得帖」のシリーズとして「経営心帖帖」もお薦めします。