今月の学び(2022.1 №50)

後継リーダーに必要な役割と仕事⑤-リーダーは「信用」という資産を会社全体に植えつけること

日本の商人道の教えの中に「〝誠実〟〝信用〟〝勤勉〟〝倹約〟は基本中の基本である」という教えがある。

しかし戦後、特に1970年代から1980年代にかけて米国型経営とりわけ金融資本主義とか株主資本主義が入り込み「利益優先主義」などによって短期的利益が求められるようになると、日本の経営者にも変化が表れ始めた。そうなってきたことによって「ごまかし」「不正」というのが多くなったのである。

前述した商人道の教えの中でも「信用」はあらゆる相互関係の中でも欠かすことができないものだ。ITとかデジタルとかが言われ始め、そちらの方に目が行きがちであるが、このような教えは「不易」(変わらないもの)として大事にしなければならない。

「10(テン)・10(テン)・10(テン)の法則」がある。「信用を築くには10年はかかる、失うのは10秒、そしてまた信用を築くのには10年はかかる」ということだ。

国と国との関係、会社と会社との関係、会社と働く個人の関係、個人同士の人間関係など、実に多くの関係によって会社は成り立っている。

しかし、最近の日中、日韓の関係でもこのお互いの「信用」というところに「?」がつき始めている。

特に中国とは国交正常化50年を迎え、この50年で政治、経済、文化などでお互いの信用、信頼を築いてきたのであるが、「近くて遠い隣人」の関係がここしばらく続いている。

信用を築き、保つためには「約束を守る」「自分の利益だけでなく相手の利益も考える」ことだ。

かつて台湾の財閥の仕事をしたことがある。その時に聞いた話しで本当かどうかは分からないが「華僑では契約書はない」という。契約書というのは法律で守られた約束の一つである。契約書はその手段の一つにすぎない。

人間の良心と叡智をもってすれば、本来であれば、法律も契約書も不要となるはずのものである。しかし、企業の不正、不祥事は絶えることはない。

これも過去の話しであるが、丸井という会社(当時、クレジットとか月賦の小売企業として首都圏では若い人たちからの絶対的支持があった)の仕事をしていた時、当時の社長の青井忠雄さんが「月賦で商品を売るということは信用なんです。お客様のことを信用しないと。先に商品を渡すのですから…。だから私たちの小売りは信用業なんです」とおっしゃっていた。なるほどである。

「信用を築く」、それは「無形の資産を築く」ということである。

信用づくりに励んで欲しいものです。そして一人ひとりの社員と信用の大切さを共有して欲しいのです。